2025年1月30日、水処理の総合展示会「InterAqua」にて開催された「浄水・排水のPFAS規制動向と対応戦略」セミナーに、当社アジアアフリカ環境ソリューション室 室長の山内が登壇しました。
「環境省・各務原実証試験結果報告~LFP法によるPFAS水浄化~」と題し、当社が実施した2件の実証試験データをもとに、高除去率・低コスト・低環境負荷を実現するロングライフ水浄化技術への取り組みについて解説しました。
1.PFAS浄化技術「LFP」とは


今回の2つの実証試験で使用されたのは、当社のPFAS浄化技術「ECOクリーンLFP」です。
独自の「プリーツフィルター」と「機能性粉体」を組み合わせ、高効率かつ低環境負荷でPFASを処理します。
機能性粉体は、環境省の実証試験では粉末活性炭を、各務原実証試験ではトリポーラス™を使用しました。
<ECOクリーンLFPの特徴>
・機能性粉体をプリーツフィルターに薄く積層させ「添着層」を形成。その添着層でPFASを効率的に吸着・除去。
・細粒化した機能性材料により吸着能力を最大化。廃棄物等の大幅なコスト削減が可能。
・機能性粉体の添着、ろ過吸着、洗浄剥離、再添着まで全自動でスムーズな運用を実現。
2.環境省実証試験のフローと課題


環境省実証試験では「室内試験」と「現地試験」の両方を実施しました。
室内試験では、複数種のPFASや全有機炭素(TOC)が存在する条件下での吸着特性を評価。
現地試験では、LFPを装置化し連続的な水質浄化を実施。処理性能、安定性、ランニングコストなど技術の実用性について検討しました。
3.環境省実証試験の室内試験結果


室内試験では、汚染源を想定し高濃度のPFAS条件下で2つの試験を実施しました。
試験1: 純水+PFAS4種(PFOS、PFOA、PFHxS、6:2FTS)各100,000 ng/L
試験2: 純水+PFAS4種(PFOS、PFOA、PFHxS、6:2FTS)各100,000 ng/L + TOC(フミン酸試薬)3 mg/L
※試験2は、実際の地下水環境を想定しています。
試験結果として、通水初期の除去率は試験1で98.7%、試験2で99.7%と高い除去性能を確認しました。しかし、試験2では積算処理量が試験1の約1/4にとどまりました。
この結果から、TOCをはじめとする自然有機物(NOM)の影響を受けにくい吸着材の選定が重要であると結論づけました。
4.現地試験装置と原水の水質


現地試験では、LFPを装置化して現地に持ち込み、実際の汚染湧水を43日間連続処理しました。
この試験により、現場での長期浄化運転の実用性を検証しています。
処理前の原水におけるPFOS・PFOA・PFHxSの合算濃度は1,330 ng/Lでした。
5.現地試験結果


試験結果として、以下のことが確認できました。
PFOSおよびPFOAの合算濃度: 処理後の濃度が「不検出」(1 ng/L以下)を達成(試験開始~6日目)
PFAS3種(PFOS・PFOA・PFHxS)の合算濃度: 除去率は概ね90%以上を維持(積算処理量44.8㎥(29日目)まで)
※この除去性能は、従来の粒状活性炭技術と比較して、活性炭1kgあたりの処理量が約4倍に向上。
一方で、積算処理量44.8㎥以降は徐々に差圧が上昇、フィルターの目詰まりによって除去率が低下しました。
高い除去率とロングライフを実現するためには、ファウリング(差圧上昇)を抑制するフィルター材質などの改良が必要であると考えられます。
6.ファウリングと試験で得られた結果


蛍光X線分析の結果、ファウリング物質は粘土、鉄、銅、臭素、亜鉛、カルシウムであることが特定され、これらがフィルター差圧上昇の原因であると考えられました。
以上の結果から、本技術は有効性、経済性、操作性、安全・環境調和性において一定の評価を得ることができました。
一方で、以下の2点が今後の課題として残りました。
・PFASをより効果的に除去できる吸着材の選定
・ファウリングを抑制できるフィルターの開発
7.各務原実証試験の概要と改良点


環境省実証試験の結果を踏まえ、2024年秋に各務原市で実施されたPFAS処理技術の性能試験に参加しました。
本試験でも、室内試験と現地試験の両方を実施しています。
今回の試験では以下の改良を加えました。
・吸着材: ソニーグループが開発した吸着材「トリポーラス™」を採用
・フィルター: ファウリング低減を目的に、ろ過精度0.3㎛×99.9%のナノファイバーフィルターを採用
8.各務原原水の水質と試験結果


各務原での原水に含まれるPFAS3種(PFOS・PFOA・PFHxS)の合算濃度は924.3ng/Lで、処理後は10.5ng/Lまで低減し、最大98.9%の浄化に成功しました。
特筆すべきはそのパフォーマンスです。
除去率94%以上でのフィルター1㎡あたりの処理量は、環境省実証試験(活性炭使用)の30㎥に対し、本試験では74㎥を記録しました。
9.ロングライフ化と今後の課題


その他の指標として、以下の結果が得られました。
吸着材1kgあたり除去率94%での処理量: 環境省実証試験 60㎥ / 各務原試験 124㎥
吸着材1kgあたり除去率90%での処理量: 環境省実証試験 89.6㎥ / 各務原試験 128㎥
※各務原試験の処理量は、フィルター面積を1㎡に換算した値です。
これらの結果から、高い除去率を維持しつつ、処理パフォーマンスの向上が確認できました。
また、本試験においてもファウリング物質の推定を実施。
連続通水試験後に使用済みトリポーラスをSEM・EDXで観察した結果、径0.5㎛未満の微粒子が多数確認されました。これらは連続処理中に析出した酸化物と推定され、ファウリング原因物質となる可能性があります。
高除去率とロングライフ運転の両立を目指し、今後もファウリング対策の検証を重ねていきます。

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登壇者:山内 仁

山内 仁
株式会社流機エンジニアリング
アジアアフリカ環境ソリューション室 室長
国立弘前大学教育学部卒業、同大学院理学研究科(地質)修了。理学修士。専攻:地質学、堆積学、教育学。技術士(応用理学部門(地質)、総合技術監理部門)。
大手コンサルに所属していた1994年ニカラグア国マナグア市上水道整備計画基本設計調査(JICA)、1998年汚染土壌等復旧工事総括監理業務(環境省)に従事。エンバイオ・グループに所属していた2012年から中国での土壌汚染対策に従事。近年は操業中工場向けに診断から様々な環境対策(排気・排水・土壌・廃棄物・水資源活用)を提供する中国環境リスクソリューションを構築する。2021年2月より、現職。
セミナー当日の様子
当日は約190名に聴講いただき満席となるなど、大変注目を集めたセミナーとなりました。

