「水処理の三方良し」、このフレーズは水処理に対する私たちのポリシーである。環境に良く、ランニングコストを削減し、増産や品質向上につながる取り組みは、今の世代の要求を満たすことができる。また、「水処理の三方良し」の取り組みは気候変動対策、海や陸の豊かさを守る未来世代にも良い取り組みと言える。まさに水処理の三方良しが「持続可能」な開発の実現となると信じている。
この取り組みを実現させる弊社の水処理システムにLFP法がある(プリーツフィルター・機能性粉体法)。
この方法はプリーツフィルターに機能性粉体を添着し薄層を作り、原水はその薄層でろ過することにより難分解性有機化合物の除去を行う処理方法である。機能性粉体には、活性炭の他、ゼオライト、金属有機構造体(MOF)などがあり浄化対象物質に応じて機能性粉体の種類を選択する。
機能性粉体に活性炭を使用する場合、弊社ではヤシ殻活性炭を標準としている。ヤシ殻活性炭を選択した理由はLFP法での吸着性能の高さであるが、植物系活性炭は廃棄焼却時のカーボンニュートラルの観点から二酸化炭素排出量の削減にも寄与できる1)。石炭系破砕炭に比べてヤシ殻破砕炭は製造時の二酸化炭素排出量は大幅に少ない(表1参照)2)。
表1 製造時の二酸化炭素排出量算定結果
①石炭系破砕炭 | ②ヤシ殻破砕炭 | |
製造時の二酸化炭素排出量の合計 t-CO2/t-AC |
25.89 | 3.94 |
機能性粉体の使用後の処理には、廃棄、再生又は加工し用途を変えた再利用の道筋がある。事業活動で活性炭を使用した場合の廃棄方法について、廃活性炭は泥状であれば産業廃棄物の「汚泥」、固形状又は粉末状であれば「燃え殻」に該当し、適切な処分方法が求められている(出典:九都県市首脳会議廃棄物問題検討委員会HP、https://www.re-square.jp/jigyou/tekisei/)。再生できない活性炭の多くは廃棄処分されていると思われる。一方、廃棄処分されていた廃活性炭を有価物に加工して、廃棄物のゼロエミッションの達成や化学肥料製造に伴う排出CO2の削減に貢献した事例もある(表2参照)。持続可能な開発の観点から、廃棄物発生量は少なくし、可能な限り活性炭を再生又は再利用したいものである。
今回、巻末の写真では中国南京市の水辺の代表的観光地を取り上げた。2012年以来、都市水辺のリニューアルと水質改善が進められた場所である。
表2 廃活性炭の再利用方法の例
対象物と生産プロセスでの利用方法 | 過去の処分方法 | 現在の利用方法 |
色素や微量な不純物を除去するために使用した活性炭 | 活産業廃棄物として破棄 | 加工して土壌改良剤として農地で利用 |
参考文献
- 保坂幸尚,北野守康,石田直洋,岩波亜紀子,佐藤貴文(2016):植物系活性炭の再生後の浄水処理性に関する調査研究、第44回環境システム研究論文発表会講演集
- 佐藤克昭,高橋広治,大川高寛(2013):ヤシ殻系球状活性炭「エバダイヤ LG-40」シリ-ズの 高度浄水処理への適用性について,エバラ時報 238(2013-1),p.7
写真1 水辺の風光帯・(南京市)夫子廟。孔子を祭っている廟である。古代最大の科挙試験場でもあり、天下文枢(直訳・世界の学問の中枢)の門がある(写真右)。南京市の有名な歓楽街で、レストラン・土産店・酒店(レストラン付きホテル)が並び、特に夜は多くの観光客で賑わう。
写真2 水辺の風光帯・中国(南京市)近現代史遺址博物館。600年の歴史を持つ江南様式の庭園の中に位置する博物館。辛亥革命(1911年)後、中華民国臨時政府の中心である総統府も建てられた。写真右は中国風Cafe(2013年10月撮影)。中国茶を飲みながら時間を気にせず過ごせる場所である。作文するにはちょうど良い場所。