コラム「坤輿万国全図」 PFAS(Per-and polyfluoroalkyl substances、パーフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物、有機フッ素化合物)
PFAS浄化に関する問い合わせが多くなった。この際、PFASについて整理したい。PFASとは、OECD(2021)による定義では以下のとおり示されている。
「PFASは少なくとも1つの完全にフッ素化されたメチルあるいはメチレン炭素原子(フッ素が結合している炭素原子に水素や塩素・臭素・ヨウ素原子が結合していない)を含む物質と定義される。つまりいくつかの例外を除き、少なくともペルフルオロメチル基(-CF3)又はペルフルオロメチレン基(-CF2-)を持つ化学物質」と示されている。
(原文)PFASs are defined as fluorinated substances that contain at least one fully fluorinated methyl or methylene carbon atom (without any H/Cl/Br/I atom attached to it), i.e. with a few noted exceptions, any chemical with at least a perfluorinated methyl group (–CF3) or a perfluorinated methylene group (–CF2–) is a PFAS.
Reconciling Terminology of the Universe of Per- and Polyfluoroalkyl Substances: Recommendations and Practical Guidance
Series on Risk Management No.61,OECD(2021)
OECD(2018年)報告書ではPFASには4,730種類以上があると示されている。フッ素樹脂のほとんどがPFASに該当する中で、OECDの定義ではPFASに該当しない物質に、ポリフッ化ビニル(PVF)がある。PVFはフッ素が結合している炭素に水素が結合しているためPFASには該当しない。
主なPFASの化学式、用途、各国の規制を表1に示した。短鎖(炭素鎖 8 未満)PFASは主にPFOSやPFOAの代替品として使用されてきた。PFOSやPFOAに比べて安全性が高いといった報告もあるが、EU及び米国の規制動向は総てのPFASに対し規制が適用される方向である。
表1 主なPFASの化学式、用途、各国の規制
長鎖 炭素鎖 8 以上 | 短鎖 炭素鎖 8 未満 | 全PFAS | |||||||
長鎖PFCAs | PFOS | PFOA | PFHxS | PFHxA | PFBS | PFBA | |||
化学式
モル質量g/mol |
C9-C21 | C8HF17O3S
500.13 |
C8HF15O2
414.07 |
C6HF13O3S
400.11 |
C6HF11O2
298.055 |
C4HF9O3S
300.10 |
C3F7CO2H
214.04 |
(-CF3)又は(-CF2-)を持つ | |
用途 | 界面活性剤、フッ素樹脂の製造、泡消火薬剤、繊維、塗料、コーティング剤等 | 泡消火薬剤、半導体、金属メッキ、フォトマスク(半導体、液晶ディスプレイ、写真 フィルム等
|
泡消火薬剤、繊維、医療、電子基板、自動車、食品包装紙、石材、フローリング、皮革、防護服等 | PFOS、PFOA の代替。泡消火薬剤、金属メッキ、織物、革製品及び室内装飾品、研磨剤及び洗浄剤、コーティング剤、電子機器及び半導体製造等 | ペルフルオロポリマー製造のための加工助剤、泡消火薬剤、繊維、紙、金属メッキ、コーティング剤等 | PFOSの代替。
ポリマー製造及び化学合成時における触媒/添加剤/反応剤、電子機器用ポリカーボネートの難燃剤等
|
防汚性のある布地、紙製の食品包装、カーペット、写真フィルムの製造 | 撥水剤、表面処理剤、乳化剤、消火剤、コーティング剤等 | |
POPs条約 | 2022年POPRCで
審査 |
2009年
付属書B |
2019年
付属書A |
2022年
付属書A |
― | ― | ― | ― | |
EU | REACH
高懸念物質 (SVHC) |
2012年(C11-C14)
2015年(C9以下) 2017年(C10)追加 |
― | 2013年指定済み | 2017年指定済み | ― | 2020年指定 | ― | ― |
REACH
制限物質 (付属書ⅩⅦ) |
2023年施行予定
(C9-C14) |
― | ― | 提案中 | 提案中 | ― | ― | 提案予定 | |
米国 | TSCA | 2020年SNUR追加
(C7-C20) |
2010年
SNUR追加 |
2020年
SNUR追加 |
2007年
SNUR追加 |
2021年
規則案公表 |
|||
中国 | 中国厳格制限の有毒化学品名録 | ― | 2020年 | ― | ― | ― | ― | ― | ― |
産業構造
調整指導目録 |
ー | 2019年代替品と代替技術の研究開発と応用は激励類技術とする | ― | ― | ― | ― | ― | ||
日本 | 化審法 | ― | 2010年第一種特定化学物質指定 | 2021年第一種特定化学物質指定 | 審議予定 | ― | ― | ― | ― |
水道水質基準 | ― | 2020年水質管理目標設定項目
目標値(暫定)PFOS及びPFOAの合計値50ng/L以下 |
2021年要検討項目に追加 | ― | ― | ― | ― | ||
水質汚濁防止法 | ― | 2020年要監視項目
指針値(暫定)PFOS及びPFOAの合計値50ng/L以下 |
2021年要調査項目に追加 | ― | ― | ― | ― | ||
土壌汚染対策 | ― | 有機フッ素化合物(PFOS・PFOA等)を含めた土壌汚染を対象とした、低コスト・低負荷型の土壌汚染調査・対策技 術を長鎖 | ― | ― | ― | ― | ― |
※2022年7月 更新中
用語説明
1)POPs条約(残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約)
環境中での残留性、生物蓄積性、人や生物への毒性が高く、長距離移動性が懸念されるポリ塩化ビフェニル(PCB)、DDT等の残留性有機汚染物質(POPs)の、製造及び使用の廃絶・制限、排出の削減、これらの物質を含む廃棄物等の適正処理等を規定している条約。
附属書A物質は、製造・使用、輸出入が原則禁止。
附属書B物質は、製造・使用、輸出入を特定の用途、目的に制限
2)REACH
Registration, Evaluation, Authorization, Restriction and Chemicalsの略で、2007年6月1日からスタートした欧州の化学物質管理における法規制。EU域内で製造・使用される化学物質はRegistration(登録)、Evaluation(評価)、Authorization(認可)、Restriction(制限)の義務が課される。
SVHCとは、高懸念物質(substances of very high concern)のことで、REACH規則の附属書ⅩⅣに収載される認可対象物質の候補になる物質。
(制限対象物質リスト)附属書ⅩⅦに制限が規定されている物質とは、そのもの調剤又は成形品に含まれている物質については、制限の条件に合致しない場合には製造、上市又は使用はできない。
3)TSCA
有害物質規制法(TSCA:Toxic Substances Control Act)は有害物質の製造や輸入を規制する法律(1976年制定)。
SNUR(重要新規利用規則)とは、米国環境保護庁によるリスク評価の結果、①人や環境に不当なリスクがある恐れがある、または、②環境への放出や曝露が大きい恐れがあると判断された物質について、製造、輸入または利用を制限する規則。
4)化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(昭和48年・1973年)
第一種特定化学物質とは、難分解性、高蓄積性及び長期毒性又は高次捕食動物への慢性毒性を有する化学物質。
第一種特定化学物質については、製造又は輸入の許可(原則禁止)、使用の制限、政令指定製品の輸入制限や第一種取扱事業者に対する基準適合義務及び表示義務等が規定されている。
中国甘粛省蘭州から新疆ウイグル自治区・ウルムチ市へ、地形・地質・水環境に関わる旅の記録を連載してみたい。
写真1 ウルムチへの高鉄(中国の新幹線)の始発(蘭州西駅)の街・蘭州市。褐色の河は黄河である。黄河でもっとも上流に位置する大都市であり、黄河の渡河地点から発達した都市と言われている。最初の目的地、新疆ウィグル自治区鄯善(シャン シャン)はここから11時間の旅である。
写真2 ここは既に羊料理の本場である。どこの店も飲酒は禁止であったが、柔らかな羊串焼きの味は中国を旅した中で一番美味であった。
写真3 列車は甘粛省蘭州市を出発してまもなく黄河をわたり西北西へ、支流の湟水(ホアン スイ 川)沿いにチベット高原北東部・青海省西寧市向かう。ここで進行を北寄りに変えて山岳地帯・祁連(チー リャン)山脈を通り、再び甘粛省の乾燥した平原に出て西へ進むことになる。
左:西寧の駅から見えた切り立った断崖。地質は砂だけに見える。堆積構造は水平な互層、時代は? 根拠はないが数百万年前から7千万年前。堆積環境? 自信はないが浅い湖、水付きの風成生堆積物であろうか? チベット高原から供給されたと思われる膨大な堆積物である。中:途中で見かけたイスラム寺院。これから多く見ることになる。民族構成の変化を感じる。右:平原の先に祁連(チー リャン)山脈が見えてきた。雪である。もうすぐ5月というのに、列車は吹雪の中を進むことになる。そろそろ昼食が心配になってきた。